天使の属性

　トマス・アクィナスによると天使には、次のような属性がある。

○　非質料性（Immaterialitas）

　現象界の存在は、物体（corpus）からなる肉体を有している。物体とは、質料（materia）と形相（forma）の複合からなり空間的な位置（situs）を占有するものである。天使は物体からなる肉体を持たないので、非物体性（incorporeitas）とされるが、物体として顕現する前の形相をもたない質料にも依存しないので、非質料性（immaterialitas）でもある。
　このことは天使が現象界に、所属していないことを示している。

○　自存性（Subsistens）

　天使は、現象界の生命体のように多数の個体が種族に統合されているのではなく、「種」（species）の数だけの「個」（individuum）が存在する。つまり、同一の種に属する多数の個的天使というものはなく、各個の天使がそれぞれ相互に種的に異なっている。
　セラフィムという天使の種族がいる訳ではない。セラフィムという階級をもつ天使が存在するのである。これは「種」というものが、同じ形相を有する個体の集合であることから、肉体もなく形相と質料の複合体でもない天使には、「種」でまとめあげるグループは存在せず、全ての「種」が同時に「個」でもあるからだ。これを先に説明したOrdoと混同しないように。

○　局在性（Localisatio）

　この世界に存在する物体は、固有の位置をもつので、その次元的な量の分だけ場所と接触していると考えられる。それを「次元的量の接触（Contactus quantitatis dimensivae）」という。例えば、人間は子猫よりも次元的量が大きいので、接触領域はそれだけ広くなる。ところが、霊的存在は、次元的量をもたないので、この種の接触はあり得ない。
　非物体的なるものは、物体に何らかの直接的な力を及ぼしている限りにおいて、その力で場所に触れているとも言える。これを「力の接触（Contactus virtutis）」と言う。
　神は無限の力の接触により全宇宙に触れている。つまり、全ての場所に存在する。これを偏在という。しかし、天使は有限の力しかもたないので、偏在はしない。ある限界をもった場所に接触しているだけである。これを天使の局在という。
　この局在する天使存在は、「力の接触」である故に排他的である。つまり、同じ場所（接触領域）に天使は二人存在できない。力が反発し合うからだ。そして、天使が接触する場所を移動するときは、肉体をもつ存在がやるように連続的にその間を結んで動くこともできれば、瞬間的に移動することもできる。むろん、これは現象面を眺めているからで、天使は力を流し込む場所を連続に、または、不連続に変化させているだけである。

○　永劫性（aeviternum）

　永劫とは永遠と地上の時間との中間に位置する概念である。永遠が初まりも終わりもないのに比べて、永劫（aevum）は、始点をもつが終点のない有限の長さである。例えば、天体の寿命が永劫に続くとされているが、衆知のごとく恒星さえも寿命が尽きて白色矮星や、中性子星に退行していく。プレアデス散光星団のなかでは、グロビュールという星の卵が育っている。
　天使の寿命も星と同じ永劫の期間続くとされている。この場合は、寿命に終わりはないという意味で使われている。